1965年
ライブバンドとしての集大成アルバムです。アレンジも熟達しアビイ・ロードに次ぐ完成度の高さです。変化に富みつつも全体的にもまとまりがあります。今までの若さの勢いは低下しましたが、その分大人の渋さが見られます。
「ドライブ・マイ・カー」は軽快なロックナンバーです。モータウン似のリズムでポップな感じを演出していますが、ブルースコードをふんだんに使っているので渋く聴こえます。同音連打のメロディーはロックな感じですが、非和声音をメロディーにしているのでなんだかジャジーなところもあるのです。ジョンとポール二人で苦心したという歌詞はコミカルで微笑ましいものです。
「ノルウェーの森」ではインドの弦楽器シタールが初登場です。シタールは映画「ヘルプ!4人はアイドル」の小道具に使われたときにジョージが興味を持ったことからレコーディングでよく使われるようになりました。歌詞の内容はそれまでの単なる惚れた腫れたではない、大人の複雑な関係が仄めかされています。邦題は「森」ですが、実際は「木材」です。歌詞の「いいよね?ノルウェー産の木材だよ」というのは当時のポールの恋人の部屋の内装から来ているそうです。
さらに「ひとりぼっちのあいつ」は恋愛を抜けて政治的なものになっています。それでも楽曲そのものはポップです。3声のコーラスが印象的です。そして、実はベースラインが格好いいんです。
前作に続きこのアルバムでもジョージが2曲書いています。前の2つの駄作に比べると本作の2曲は大躍進です。アクのあるロックな曲と、12弦ギターの美しいシンコペーションを駆使した曲と、それぞれ特徴の違ういい曲なのです。
このアルバムの意外なところは、最初から最後まで何も起こらないことです。あくまでも真面目なんです。このアルバムでイタズラといえば「ガール」のバックコーラスが「Tit(おっぱい)」を連呼するところぐらいではないでしょうか?