Abbey Road

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Abbey Road

The Beatles

Abbey Road

1969年”ビートルズの最後っ屁”
 バンドとしての求心力を失っていたビートルズは1969年1月に「ゲット・バック・セッション」で原点回帰を図り、大失敗に終わりました。メンバーの確執は深まるばかりで、それぞれソロ活動に目を向け始め、解散ムードが漂っていました。
 失敗のままで終わりたくない、解散は仕方がないが最後にもう一度ちゃんとしたビートルズらしい作品を残しておきたいという意思のもとに録音されたのが「アビイ・ロード」と言われています。当然、彼らが本気を出せば傑作が生まれます。ライブバンドとしての持ち味、スタジオバンドとしての持ち味両方が如何なく発揮された完成度の高い作品です。

 ジョン・レノンの「カム・トゥゲザー」は盗作問題でもめた曲ではありますが、このずったんべったん這いずるような音使いはだれも思いつかなかったものです。エアロスミスやマイケル・ジャクソンがカバーしていますがどうしても浮ついて聴こえてしまします。オリジナルに勝るものはないのではないでしょうか?演奏する時のコツは高音部を絞り気味にしてぼかすことです。ハイハットはイントロ以外で叩いてはいけません。

 「サムシング」はジョージ・ハリスンの集大成です。不定調のイントロ、ハ長調からイ短調にピボットし、イントロに戻りイ長調に移調し、ダイナミックなクリシェの応酬はとてもドラマチックです。しかもおいしい個所は一回しかやらないのもビートルズの格好よさです。専門用語はともかく、要するに、ジョージの音楽的知識をフル活用してそれが綺麗に仕上がったということです。

 「マックスウェルズ・シルバー・ハンマー」はポール・マッカートニーのお遊びでしょう。曲そのものはむしろ駄曲ですが、音の工夫は秀逸なのです。澄んでいながらザラザラした痺れるようなギターの音や、シンセサイザーの軽快な音、ハンマーでカネを叩く音、うまく駆使して全体的に間抜けな印象に仕上げています。それでもエンディングのコーラスは格好いいんです。

 「オー!ダーリン」は50年代のバラードアレンジにロック魂を注ぎ込んだような作品です。出だしはありきたりな楽曲ですが、サビの展開は予想の斜め上を行きます。音楽をやっている人なら思うのです「何でここでF???」

 「オクトパス・ガーデン」はビートルズの愛の結晶です。リンゴ・スターは他メンバー全員から愛される兄貴分。解散後もリンゴ兄貴のソロ作品にはビートルズメンバーが全員クレジットされているのです。そんなリンゴが作った曲、メンバーみんな嬉々として取り組んだのが音を聞くだけで伝わってきます。ただ、ほのぼのとして楽しさあふれる曲ですが、リンゴもビートルズの殺伐とした雰囲気から抜け出したかったのではないかということが歌詞からにじみ出ています。

 長閑な曲の次は「アイ・ウォント・ユー」です。ジョンのソロアルバム「Plastic Ono Band(ジョンの魂)」を彷彿とさせる狂気的なロックバラードです。変拍子を多用し、ギターと歌が同じ旋律を奏で、同じ言葉を連呼し、叫び、気持ち悪い白色ノイズを被せて残響も何もないカットアウトで「ぶちっ」と終わります。長々と録音し、どのように終わらせるか悩んだジョンはミュージシャンにとって命ともいえる録音テープを「もうめんどくせぇ!切ってしまえ」とハサミで切ってしまいました。普通はしませんそんなこと。天才のやることは意味がわからないものです。

 気が狂ったところでレコードを裏返すと春が来ます。ジョージの「ヒア・カムズ・ザ・サン」で狂気から救われるわけです。ビートルズは「上げて落として、落して上げて」聴者を困惑させるのが得意なのですから。ジョージ得意のシンコペーション多用の佳曲。中程の不定調三拍子のフレーズがパワフルでドキドキします。ジョージは出だしでまったり優しく、中間で声を張り上げ、優しい出だしに戻るのが得意なようです。

 スタジオ多重録音の集大成が「ビコーズ」です。ベートーベンの月光ソナタの譜面を逆さにして弾いてみたのに感化されてジョンが作った曲です。コーラスは3声ですが、各パート3重録りで重厚にしています。つまり9人で歌っているのと同等ということです。

  ここからがメドレーです。「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」でポールがビートルズ所有会社の財政難を嘆くことで始まり、ジョン自身が言うところの雑曲群が連なり、実際に自宅に闖入した空き巣女についてポールが歌い、朗々とした子守唄が続き、「荷を背負うんだ」と4人で息巻いて、「ジ・エンド(おしまい)」でメドレーは終わります。
 「ジ・エンド」は珍しく、リンゴのドラムソロがあり、ほかの3人のギターバトルが続きます。格好いい攻めのロックですが、エンディングで転じて美しいバラードになります。ポールは今でもコンサートの最後に演奏し続けている曲です。

 さて、このアルバムでもビートルズはバカです。「ジ・エンド(おしまい)」と歌っておきながら、空白の数秒の後、すべてを台無しにするかのように「ハー・マジェスティ」という23秒の弾き語り曲で落としてきます。ジャン!とオーケストラヒットで始まりますが、女王陛下をからかう雑な弾き語りです。終わり方もかなり雑です。余韻も何もかも台無しです。デビューから今までの演奏は何だったのか?やはりビートルズは最後の最後でやってくれました。

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