1968年
デビューから年月とともに、アルバム作成の主導権がジョージ・マーティンからビートルズメンバーに徐々に移行していたわけです。その結果こんなしっちゃかめっちゃかな作品に仕上がりました。どうやら、ビートルズは上げて下げてのジェットコースター的な曲順が好きらしい。
強烈なのは、バースデイ(誕生日パーティ)、ヤー・ブルース(パーティの後の抑うつ状態)、マザー・ネイチャーズ・サン(田舎に逃避)、エヴリバディズ・ガット・サムシング・~(疎外感による怒り)、セクシー・セイディ(憎しみによる怒り)、ヘルター・スケルター(ヤケクソ状態)、ロング・ロング・ロング(虚脱)の流れです。出鱈目に並べられているように思えてそこに何かしらの演出が見て取れます。
とどめはレヴォルーションNo.9(革命そのもの)の後で締めくくるグッド・ナイト(ゆっくりお休み)です。グッド・ナイトはその曲だけで聴けばディズニー風の心地よい佳曲ですが、最後に持ってくることでこのアルバムを見事に台無しにしています。ぶち壊しです。今までのバカ騒ぎを全否定するかのようにリンゴが「おやすみなさい。ぐっすり眠って、いい夢を」とこれ以上ない甘い声で歌うのです。
やりたい放題の不健全極まりないこのアルバムを名盤と呼ばずにはおられません。